略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
ふたりで部屋を出ようとしたところで、扉が軽くノックされた。
「失礼いたします」
入ってきたのは優花梨だ。
「どうかされましたか? 支配人。物音が……」
事務所にまで聞こえてしまったのか、それとも応接室の外で待っていたのか。
心配そうに三人を見回し、服を整え終えた陽翔に問うた。
「優花梨」
「はい」
陽翔が呼ぶと、優花梨は指示されていないのに忠実に従うように陽翔に歩み寄る。
その姿に、優花梨の相当な深愛が感じられた。
「美郷が婚約を解消したいらしいんだ。それでは困ると言っているんだが、わかってもらえない」
「あら」
「匠海が、美郷と結婚するつもりでいるらしい。
でも俺は美郷と結婚しないといけないし、俺もそのつもりだ」
「はい」
「優花梨は? 俺と結婚したいか?」
「私は、あなたといられるなら、どんな環境でも構いません」
陽翔を見上げる優花梨の姿に、若干の狂気を見た。
一緒にいられるならどんな環境にあってもいいと言う優花梨のように、【結婚】を絶対としないカップルは少なからずいるだろう。
けれど、陽翔の言う【結婚観念】は到底理解できるようなものではない。
それを受け入れている優花梨の観念に、美郷は身を固くした。