略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「美郷ちゃん……」


 溜め息に混じえて名前を呼ばれ、やっぱり不躾なことを言ってしまったのかとしゅんと匠海を見やる。

 すると、美郷を見下ろしスマホを持った彼の綺麗な手は、真っ赤に染まった頬に当てられていた。


「俺ね、今たぶん凄くキュンとする口説き文句言ったと思うんだけど。
 まさか俺の手に見惚れてるとか、……ミイラ取りがミイラになるって、このことかな」


 匠海は、まいった、と今度は額に甲を当てて、うなだれてしまった。


「す、すみません、失礼なこと言って……」

「いや全然いいんだよ、いいんだけどさ……。
 仕事ができるとか、人当たりがいいとか、イケメンだとかは散々言われてきたけど。
 手を褒められたのは、初めてだよ」


 もしかして、照れてる……のかな?


 いつも飄々としている匠海の見たことのない姿に、美郷の胸はなぜかむずむずとしたこそばゆさを感じた。
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