略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
どうか、陽翔さんと優花梨さんが、当たり前の幸せを手にできますように……。
「ずいぶん長いことお願いしてたけど、何頼んでたんだ?」
多くの人手で賑わう神社の境内前で、隣にいる匠海が美郷を見下ろしてきた。
「ふふ、内緒です」
「そ? じゃあ俺も内緒」
別に意地悪をしたわけでもないのに、匠海は美郷に便乗するように秘密を固持した。
匠海と初詣に来たのは、少し郊外に出たところにある有名な神社だ。
誰か知り合いに会うかもしれないと、ふたりとも目深にニット帽を被り、口元はマスクの完全防備だ。
芸能人のお忍びデートのようなスタイルのふたりは、口元は見えなくとも目だけで微笑みあう。
考えてみれば、初めてのデートだ。
好きな人に手を引かれて歩くだけで、思わずスキップしてしまいそうになる。
「何か食べ物買って行こうか」
「あ、私タコ焼き食べたいですっ」
「了解しました。お嬢様」
匠海から冗談でお嬢様と呼ばれるのは、嫌な気なんて少しもしない。
むしろ、こうやってお茶目になってくれるのも、いつもの匠海と違う部分を見られて嬉しい。