略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
屋根のついた大きな和造りの門の前に立つと、匠海は脇にあるインターホンを押した。
一瞬「頼もう」と叫べば自動で開きそうな檜格子の門だったけれど、匠海の来訪を告げる声に応えたらしい人がそこまで出迎えに来てくれた。
「あらあら、匠海お坊ちゃん」
檜格子の門の向こうから現れたのは、小柄で丸っこい年配の女性だ。
割烹着を着ていて頬の丸い、まさしく家政婦というに相応しい人だった。
「悦子さん、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。あら、そちらは……?」
ころころと笑む悦子と目が合うと、美郷は深々と彼女に頭を下げた。
「あけましておめでとうございます。乙成と申します」
「乙成……? ああ、成京銀行のお孫さんね!」
初対面なのにもかかわらず、すぐに気づいてくれてなんだか自分が有名人のようで恥ずかしい。
けれど、悦子はすぐに首をかしげた。
「あら? ですが、乙成さんのところのお孫さんはたしか陽翔坊ちゃんと……」
ぎくりとして、肩が強張る。
家政婦も知っている事情を今から覆しに行こうとしているのだから、罪悪感が美郷の肩にのしかかってきた。