略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「そのことなら、今度ちゃんと説明することになると思うから」
美郷の重みを請け負ってくれたのは匠海だ。
美郷の代わりに匠海が言うと、ひとりで背負うことではないと言ってもらえたような気になる。
「今日は、お邪魔致します」
もう一度頭を下げると、悦子はそれ以上突っ込んだことは聞かずに、ふんわりと微笑んでからふたりを中へと案内してくれた。
檜の香りが満ちる家屋の中、そそと歩く悦子について行きながら、美郷ははしたなくもぽかんと口を開けていた。
一体いつの時代に迷い込んでしまったのかと思うほどの、格式高い日本家屋。
部屋は襖や障子で仕切られ、通ってきた廊下はどこまでも続いていきそうなほど長い。
立派な日本庭園を望む廊下をぐるりと回ってきた最奥の部屋の前で、悦子は障子の向こうに声をかけた。
「匠海お坊ちゃんがお着きでございます」
「おお、匠海か。入りなさい」
悦子に応えたのは、少しだけ懐かしいと感じる男性の落ち着いた声だった。