略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
匠海も驚いたのは当然だろう。
今日は匠海と美郷のことを話に来たつもりでいただろうから。
美郷ももちろんそのつもりだ。
けれど、自分たちばかりが想いを通して、あのふたりをないがしろにすることはどうしてもできなかった。
身内の目を欺いてまで、婚約者を利用しようとしてまで、一緒に居たかったふたりの気持ちは、今の美郷なら苦しくなるほどわかるから。
美郷が頭を下げたまま、しばしの沈黙のあとに会長は朗らかに笑いだした。
「そう来たか。
お前達二人の交際を認めろと言いに来たのかと思ったが、まさかあの二人のために頭を下げに来たとは」
豪快に笑ってくれる会長に、幾分緊張がほぐされる。
しかしすぐに、会長はすっと気を鎮めると、怖さも感じるほどの冷静さで口を開いた。
「それは無理だよ、美郷さん」
はっきりと否定され、美郷はばっと顔を上げた。