略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「また連れて来ます。今度は正式に俺の婚約者として」
美郷の後ろから、堂々と告げる匠海に振り返る。
それに対して、目を細める会長は何も答えない。
静まり返ったところで、不意に廊下の方から足音が聴こえて来た。
すぐそこで止まったかと思うと、「失礼します」と言う聞き覚えのある声がかけられた。
「陽翔か」
会長が反応すると、障子がすっと開かれ、その向こうには陽翔が立っていた。
「陽翔……」
驚いたのは、美郷も匠海も同じだった。
二人へ順番に視線を移した陽翔は、チッと忌々しげに舌打ちをした。
「まさか匠海、直接じいさんに頭下げに来たのか」
「だったら、なんだよ」
「抜け駆けって言葉しらないのか?」
従兄弟同士で睨み合う視線がバチバチと音を立てる。
「美郷との婚約は解消するつもりはないと言ったろう」
「美郷は俺が幸せにする」
「お前はお前にふさわしい相手をじいさんが探してくれてる」
そうだった。
匠海もいい年齢なのだ。
陽翔と同じように、匠海にも【結城】の名にふさわしい相手を探してくれてるはずだ。