略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「なあ、じいさん」
「まあ、そうだな」
勝ち誇ったように問いかける陽翔に、会長は腕組みをして頷いた。
否定されなかったことに、胸がずきりと痛む。
こうやって話に来たのも、匠海との仲を認めてもらうためだったのに。
やはりこのまま、陽翔との婚約は取り消されないのかもしれないと胸がしぼんだ。
「は、陽翔さんは……優花梨さんとの仲を認めてもらわなくていいんですか?」
自分の想う相手と一緒になれないことが、こんなに苦しくて、哀しくて、胸が押し潰されそうになるのを、陽翔はずっと耐えてきたのだ。
そこでようやく見つけた打開策。
きっと美郷との結婚は苦渋の決断だったに違いない。
だけど……
「私は陽翔さんとは結婚できません。
匠海さんのことが好きだから……好きだから一緒にいたいです。結婚したいのは匠海さんです」
陽翔が言っていたように、お互いに想う相手と違う人と結婚しても、本当の幸せなんて手にできない。
離れずに済むことになっても、一生ずっと苦しい思いは続くのだ。