略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「認めてもらえないものを、どうやって押し通すんだよ。
 これだからお嬢様の頭はお花畑なんだよ」

「陽翔! 言い過ぎだぞ! 美郷はお前の気持ちもわかっていて、なんとかしようと……」

「匠海、陽翔」


 思わず片足を上げた匠海を、会長が静かに止めた。


「お前達を仲違いさせたいわけではない。【結城】の跡取りはお前達しかいないのだから。力を合わせてこの家を守って欲しいのが、私の願いだ。
 すまないね、美郷さん。みっともないところお見せして」

「いえ、私は……」


 みっともないだなんて思わない。

 みんな自分の想いをどうにかして遂げようと必死なのだ。
 

「年寄りは頭が固いと思われているんだろうな」


 くく、と可笑しそうに笑った会長。

 「陽翔」と呼びつけた会長は、美郷と場所を入れ替わるように言い、また将棋の駒を並べ直した。


「久しぶりに手合わせ願おうか」

「望むところだクソじじい」


 なんて口の悪い言い方だろうかと思ったけれど、恐らくこれからふたりで話をするのだろう。

 それを悟る匠海に促されて、ふたりは頭を下げて部屋を出た。



·
< 227 / 241 >

この作品をシェア

pagetop