略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 部屋に戻ろうとしていた愛結がリビングの扉の前で固まっている。

 もちろん、両親ふたりとも目を見張って驚いていた。


「もしその人のこと紹介できるときがきたら、ちゃんと連れてくるから」


 今はまだ、話せない。

 結城会長にも、了承を得ていないから。

 両親にも祖父にも、周りからは不埒な娘を持ったと思われて欲しくないから。


「一体、どういう……」

「悪い人じゃないんだな?」


 動揺を見せた母を、父は遮った。


「もちろんです。とても素敵な方なんです」

「じゃあ、今回の話は断っていいんだな」

「はい、申し訳ありません」


 今までにない美郷の意志の通った瞳に、父はただ黙って頷いてくれた。


「わかった」

「あなた……」


 決断の早い父は、母との結婚もこんなふうに直ぐに決めたのかもしれない。

 お互いが運命の相手だったと言える両親を見ていて、こんなに仲睦まじい夫婦に憧れていた。

 そして、その相手は人それぞれの出会い方で訪れるものなのだ。

 美郷は出会ったのだ、運命の相手に。
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