略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「お姉ちゃん……」


 リビングを出ようとすると、そこにいた愛結に引き止められた。

 ふたりで廊下に出ると、後ろ手に扉を閉めた愛結がこっそりと耳打ちしてきた。


「もしかして、この前の人……?」

「うん、そうだよ。だから陽翔さんとは結婚できない」


 すんなりと認めると、愛結は頬をこそばゆそうに赤らめてから、美郷の両手を拾って握りしめた。


「そっか。なんか嬉しいなっ、お姉ちゃんがちゃんと自分の気持ち見つけてくれて。
 で、どんな人なの? 毎晩電話してるくらい好きになった人って」


 自分のことのように喜んでくれる愛結は、美郷の好きな人に興味津々のようだ。

 そして、毎晩の日課もバレていたようだ。


「凄く私を大切にしてくれる人。婚約してるって言っても、構わないって言ってくれて……」


 あまり詳しくは話せなかったけれど、好きな人のことを語れるってこんなに楽しくて幸せなことだということを初めて知った。

 きっと匠海と出会わなければ味わえなかったことだ。

 陽翔と結婚していたら、そういう普通の恋愛話はできなかったかもしれない。

 この先のことはどうなるかわからないけれど、今は匠海のことを好きでいたいし、好きになれてよかったと心から思った。



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