略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「今度は何やらかしたんですか?」
理子は美郷に耳打ちすると、にやにやと目を細めながらそこから離れる。
何をしたと聞かれても匠海が不機嫌な理由なんてわからない。
やっぱり楽しそうにしながら、理子はひらひらと手を振ってひとりで外に出て行ってしまった。
「ちょっと話いい?」
「は、はい……」
断ることなんてしなかったと思うけれど、低い声が叱られる予兆のようで、受けてしまったことに若干の後悔を感じた。
駐車場に着くまでもずっと無言の匠海。
昨夜は本家に行くからと、おやすみのメッセージを交換しただけだった。
とくに何か気に触るようなことをしたとも思えないのだけど、何も言ってもらえない時間は不安になる。
誰の姿もない駐車場の片隅。
この前のように、どこかランチに出るのかと思っていると、誰の目にもつかない白い車の陰で、突然両方の二の腕を掴まれて身体が車体に押し付けられた。