略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 突然のことに驚いて匠海を見上げる。

 琥珀の瞳は逆光になっていて暗い。

 やはり匠海は何かに怒っている。


「匠海さん?」

「縁談、断ったって聞いた」


 久しぶりに言葉を発した匠海は、瞬間的に目元を歪めた。

 とても哀しそうにした彼の表情に、胸がぐっと締めつけられる。


 どうして、そんな顔するんですか……?


「はい……好きな人がいるからって言いました」

 
 匠海のことを口にする自分が恥ずかしい。

 何度か彼に伝えたけれど、その時の雰囲気とか勢いとかに任せて言った感じがあるから、目の前にしてただそれだけを伝えることが恥ずかしいのだ。

 胸がどきどきと緊張に急かされているのに、どういうわけか匠海の不機嫌さは治らない。


「どうして……」

「え……?」

「好きな人、って……誰だよ」


 苦しげに呟いた匠海の言っている意味がわからない。

 匠海以外に好きな人なんているわけないのに、それを自分だと思ってくれていないようだ。
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