略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
 本当に、デート、ではなかった。

 今度こそ、お見合いを兼ねての両家の顔合わせのはずだった。

 昨夜、どれにしようかと悩んだ末に選んだカシミアの緩いハイネックニット。

 それに合わせた同系色のミディアムフレアスカートが、申し訳程度にコートの裾から覗いている。

 仕事終わりに、そのまま予約されているレストランへ向かえるようにと着てきた。

 相手方のご両親にも恥ずかしくないようにだとか、仕事に行くからにはきちんとしすぎずラフになりすぎない服装はどれかとか。

 服を選ぶのは楽しいもので、久しぶりにわくわくしていたのはたしかだった。

 少なくとも美郷は今日の食事会を楽しみにしていたのだ。


「ほんとに、そういうのでは全然なくて……」

「……おしゃれだね、美郷ちゃん。凄く可愛い」

「えっ」

「なんだか、デートしてる気分になるな」


 図星を悟られないよう口元に笑みを引いた美郷に、匠海はまた恥ずかしげもなく歯の浮くようなことを言ってくる。


「やっと叶った、美郷ちゃんとのデート」


 驚いて匠海を見やると、彼は本当に嬉しそうな顔で目を細めていた。
< 25 / 241 >

この作品をシェア

pagetop