略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
 そんなに嬉しそうな顔、しないでほしいよ……。


 こんな些細なことで、自分と居られることを喜ぶ匠海に、いたたまれなくなる胸は痛いほどに大きな脈を打つ。


「どうして……そんな、私なんかと……」

「好きだからに決まってるさ、そんなの」


 包み隠さずさらりと気持ちを口にする匠海に、恥ずかしさが急騰する。

 コーヒーの温かさのせいなんかではなく、身体が火照る。


「で、でも、私婚約してて……」

「うん、何度も聞いたよ。
 承知の上で口説いてるんだ。生半可な気持ちなんかじゃないってこと、わかるだろう」


 柔らかだった琥珀の瞳が、いつの間にか真っ直ぐに美郷の心を見つめていた。

 嘘なんて見えない、その眼差しに想いを乗せて、ただひたすらに美郷のことが好きだと言う匠海。

 それに応えてあげられない罪悪感が、美郷の胸を締めつけた。
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