略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「これだけ気持ち伝えてても、君にとって俺はまだ、仕事上の人間だったんだな」

「そ、それは……その……」


 柔らかさを消した匠海の言い方に、かすかな怖さを感じる。

 やはりさっきの言葉は、少なくとも彼を傷つけてしまったのだ。

 いつもと違う笑みの裏で、心の痛みを堪えているのかもしれない。

 どう詫びればいいのかわからない美郷に、匠海は皮肉っぽく口端を上げる。


「俺はまだ、スタートラインにも立ってなかったってことか。我ながら、自意識過剰も甚だしいな」


 LED照明に照らされたかと思うと、彼の瞳の色が一変した。

 いつものふわふわとした雰囲気が消え、匠海の中の何かが取り払われたように見える。

 それまでの彼の様相は建前だったのかと思うくらいに、感情が剥き出しにされたような気がした。


「少しくらいは、俺を意識してくれてるかと思ってた。この一年半、誠意を伝えてきたつもりだったけど……思いのほかショックかもしれない」


 目に見えない何かに囚われ、間近に立った匠海から目が逸らせない。

 首が折れそうに真上を向くと、大きな掌が美郷の頭を優しく撫でてきた。
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