略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
 初めて匠海に触れられ、心臓がこれまでにないくらいの大音量で脈を打つ。

 衝撃的な異性との初接触に、身体が硬直する。

 目を見開く美郷の、先まで真っ赤に染まった耳元に、ふわりと綺麗な指が滑り込んできた。

 傷みのない艶やかな黒髪が、匠海の指によってそっと耳にかけられる。

 触れる指の舐めるような感触に、耳の裏にぞくりとしたものが走った。

 首をすくめ怖さすら感じていると、匠海はおもむろに腰を屈めて、美郷の耳に顔を寄せた。


「俺、今まで婚約者さんに遠慮してたのかもしれない」

「……っ、え……?」


 低い声が蠱惑的に囁いた。


「もっとちゃんと男として俺を意識してもらえるように頑張るよ、……美郷」

「……っ!?」


 心臓の爆ぜる音を聞いたかと思った次の瞬間。

 寄せられた熱い口唇が、小さな音で美郷の耳を弾いた。

 一瞬何が起きたのかわからなかった。

 陰りながら美郷を覗き込んでくる妖艶な笑み。

 妖しく弧を描く口唇を見て、耳に触れたのが彼のそれであることを認識した。
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