略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「そうしたら、正々堂々と婚約者さんから、美郷を奪える」


 身体中の血液が沸騰している。

 頭がぼうっとなって、強気に微笑む匠海の顔がおぼろになったかと思うと、美郷の身体はくらりと後ろに傾いた。


「美郷ちゃん!?」


 囚われたままだった美郷の手を匠海が引っぱる。

 缶を持つ手は、落とさないようそれごと匠海に包み込まれる。

 背もたれのないソファから転げ落ちそうだった美郷は難を逃れた。


「キャパオーバーかよ、こんくらいで」

「だ、だって……」


 美郷はまったく慣れていないのだ、男性との親密な接触に。


「まあでも、さすがにこれで俺を意識するだろ? せざるを得ないよな」


 したり顔で笑う匠海は、引き寄せた美郷をここぞとばかりに腕に抱く。

 さっきは酸欠になったのかと思ったけれど、経験したことのない男性のたくましさに触れ、今度こそ気を失いそうだ。

 匠海の言う通り、もう今までの【U&K証券の結城部長】というだけではやり過ごせないほどに。


「口先だけじゃない。本気で美郷が欲しいと思ってるから」


 ダメ押しの文句をお見舞いする匠海が、頭頂部にキスを落とす。

 立て続けに降り注ぐ衝撃に、美郷は湯上がりのようにのぼせ上がり、ついに目の前が真っ暗になってしまった。



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