略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
指の隙間から漏れ聴こえた言葉に、美郷はうつむいたまま目を見開いた。
いかに美郷を好きか語る匠海は、今までも、婚約の話を無視しているわけではなかった。
美郷の隣を陣取る婚約者の存在は、匠海にとっての最大の壁であると彼もちゃんと理解しているのだ。
それをわかった上で、匠海は美郷に想いを伝え続けている。
「そいつから絶対に奪ってやるって、思わせられる」
こちらを向いていると感じる視線の気配に、引き寄せられるように隣を見やった。
それまでよりもずっと強い眼光が美郷を貫く。
怖さを感じるくらいの鋭気に満ち、揺るぎない想いをそこに携えていた。
この目は、見てはいけなかった。
自分を奪おうとする圧倒的支配欲に、うっかり心が囚われそうになる。
手始めに動きを封じられた身体は、匠海から目を逸らせず硬直したまま。
少しも逸らすことを許さない匠海の想いの強さに、美郷は瞳と心を揺らした。