略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「だからって、俺は諦めるつもりはないから」


 いまだ逸らせなかった視線は、一瞬だけちらりと美郷を見やる瞳に捕まる。

 驚きとほんの少しの怖さにびくっと肩を揺らした。


「この先、もしかしたら美郷ちゃんが俺に振り向いてくれるかもしれない。というより、むしろそうさせるつもりでいるから」

「そんなこと……」


 “ありえない”と言えば、また匠海を傷つけてしまうだろうか。

 それでも“諦めない”としつこく美郷を口説く彼の様子が容易く想像出来る。

 いい、とも、だめ、だとも言えないまま、匠海の運転する車は、美郷の自宅付近まで走ってきた。


「あの、この辺りで大丈夫です」


 静かな夜の住宅街は、家々に暖色の明かりが灯っている。

 美郷の自宅に着く目前、広めの三叉路で車を停めてもらうようにお願いした。


「本当にここでいい?」

「はい、もうそこに自宅は見えてるので」

「そか。じゃあ、美郷ちゃんが家に着くまでここに居ていいかな」


 シートベルトに手をかけた美郷は、心からの心配を見せる匠海に少し躊躇ってから頷いた。
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