略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
小花柄のカバーを開くと、画面には【U&K結城部長】の文字が煌々と映し出されていた。
仰々しい登録名は、匠海との距離をきちんと測っているよう。
それなのに、いつだって距離を感じさせないような匠海の笑みが脳裏に浮かび、なぜか鼓動は急く。
出るのをためらってしまうのは、22時を迎えようとする夜更けに誰かからの連絡をもらうことなんてこれまでになかったからだ。
もちろん、やましい気持ちがあるからではない。断じて。
それなのに、愛結に言われた言葉がなんだか悪いことでもしているかのような気にさせる。
このまま寝たふりを決め込んで気づかなかったことにしてしまう手もあるかもしれない。
そうすれば、妙な背徳感に駆られず一時しのぎにはなるだろう。
でも、美郷を心底案ずる匠海の瞳を思い出すと、そうしてしまうことの方が罪深いような気がした。
「はい、もしもし」
『もしもし、こんばんは美郷ちゃん』
ベッドの上で正座をして電話に出ると、想像していたとおりのふわふわとした声で匠海が応答した。