略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
『今、話せる?』

「は、はい、部屋にいるので、大丈夫ですっ」


 背筋をぴんと伸ばして、膝に置いた拳にぐっと力が入る。

 軽やかに聞いてくる匠海とは対照的に、返す言葉はきびきびとした緊張を纏った。


『お家の人、大丈夫だった?』

「そ、それが……妹に見られてて。誰に送ってもらったんだって詰められてしまいました」

『ちゃんと彼氏だって教えてあげた?』

「いっ、言わないですよ! 言うわけないじゃないですか! 取引先の方だって言いました!」

『なんだそっかー。じゃあ取引先の人から昇格できるようにもっと頑張らないといけないな』

「何を頑張るんですか!」


 緊張こそあれど、電話越しの匠海はいつも通りの軽口で、自分が何に身構えていたのかわからなくなる。

 こんなに必死になっている自分の方が、おかしいとさえ思えてきた。

 匠海が言うように、このくらいの関わりであれば普通のことなのかもしれない。
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