略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
『ほんと、めちゃくちゃ嫉妬するな、その人に』


 匠海は美郷の無言の返事を、肯定と捉えたのだろう。

 嫉妬する自分を嘲るような匠海の笑いに、胸がざわざわと波立つ。

 嘘をついていることに罪悪感が募る。

 匠海は正々堂々と、美郷に思いを伝えてくれているのに。


『ああ、ごめん。また困らせてるな、俺』

「い、いえ……そんなこと……」

『じゃあ、好きになってくれた?』

「えっ!?」

『困ってるんじゃなければ、俺が嫉妬してるの嬉しいかなと思って』

「そっ、そんなわけないじゃないですか!!」


 電話の向こうで匠海があははと可笑しそうに笑っている。

 傷つけてしまっていないだろうかと心配していた美郷は、匠海の笑い声にほっと胸を撫で下ろす。


『楽しいな、こういうやりとり』

「え?」

『幸せだよ、美郷ちゃんとこんなに身近に話ができること。やっと君に少し近づけた気がする』


 意外な匠海の思いに、ドキリとする。

 美郷が思っているより、匠海は美郷との距離を遠く感じていたのかもしれなかった。
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