略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
休日の昼間、その時間に必ずしも伝えなければいけないというようなタイミングでもなく、匠海から気軽にメッセージが届いた。
【週明け、銀行に顔出すから】
取引相手としては、“お待ちしています”が正しい受け答えなのだろう。
しかしそれでは、匠海が来ることを美郷個人が心待ちにしているようだし、“楽しみ”や“嬉しい”なんてとんでもない。
どう返せばいいのかわからず、また【了解しました】とだけしか送れなかった。
冷たい返しだったかと思ったけれど、匠海は特に気にする素振りもなく、その夜先日と同じ時間に電話をかけてきた。
『出なくてもいい』と言われたものの、それでは良心が痛む。
緊張しながら応答すると、心底嬉しそうな匠海の声に、居留守を使わなくてよかったと思った。
何を話すことがあるのかという危惧を他所に、匠海は美郷のことばかり。
時折挟んでくる匠海の甘い口説き文句は定石。
美郷が恥ずかしがることも匠海はわかっていて、それすらも楽しんでいるようだった。
夜遅い時間の電話は、匠海の気づかいでほんの10分程度のものだった。
それなのに、それ以上にたくさん話をした気がする。
なんだか落ち着かないようなふわふわとした気持ちを抱えたまま、短い週末を終えた。
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