略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
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 いらっしゃいませ、と窓口係の数名がお客様に声を掛けると、フロア奥の信託課の島でも顔と声を上げるようにしている。

 週が明けた月曜日。7席ある窓口の前を通り、パーティションで区切られた信託窓口にやって来たのは匠海だった。

 遠目にもわかるすらりとした長身。

 今日もまた、オーダーものと思われるダークグレーの上等そうな生地のスーツを身にまとい、黒のビジネスバッグを抱えた匠海は、颯爽と歩くだけで女子社員の注目の的だ。

 気づいた佐藤代理は率先して、彼へ応対に向かう。

 もう散髪すべきな代理の後頭部の向こうから、インテリ眼鏡をかけた匠海が美郷へと視線を寄越してきた。

 ばっちりと目線を捕らわれ、笑みを送られる美郷は、ぽっと頬を火照らせる。

 昨夜の電話の声を耳元に思い出し、先週までとは違って身近に感じた存在感に戸惑った。

 けれどすぐに、挨拶をする佐藤代理へと彼の視線は移される。

 もう自分の方へは向けられていない彼の意識が、若干の名残惜しさを感じさせた。
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