略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「別に私じゃなくても……」
「いいわけないじゃないですか。ほら、さっさと行く」
後輩兼友人の理子は、美郷の尻を叩くように叱咤し、なぜか匠海の肩を持つ。
「敏腕ブローカーが機嫌損ねたらどうするんですか。もうクライアント紹介しないなんて言われたらうちの銀行大打撃ですよ。
私は俄然、結城部長のご機嫌取りに尽力しますから」
美郷をだしに、本店営業部の実績を上げようというのか。
営業マンも驚きのしたたかさを見せる理子は、頑として席を立たず、給湯室へ向かう美郷を楽し気に送り出した。
理子に言われるがまま、しぶしぶお茶を運ぶ美郷。
さっきまでの笑顔とは一転、佐藤代理と真剣に話し込む匠海の姿に、近づきがたい雰囲気を感じた。
いつも見ているはずなのに、軽さを見せない匠海は完全に仕事モードで、凛々しい。
窓口の女性社員が騒ぐのもわかる気がすると思いながら、一歩一歩近づくたびに脈が速まった。