略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
『それに、そんな声でそんなこと言い出した理由も気になる。
 何かあった?』


 やはり美郷の心中を察してしまう匠海に、鼓動は乱される。

 誰に相談すればいいのかわからなくて、胸を重くしていたものを一緒に持とうとしてくれる匠海に、すがってしまいそうになる。


『普通に考えたら、婚約者さんとのこと、だよな』


 ああ、ほらやっぱりだ。

 図星に苦しくなる胸が鼓動を早め、そこからせり上がる気持ちが、鼻の奥を痛ませた。

 スマホを耳から離し、秒を刻む画面をタップした。

 これ以上匠海に入ってこられると、まずいと思ったから、電話を切った。

 下ろした手の中で今一度スマホが音を立てて震える。

 【U&K結城部長】の文字に、心臓がきゅうきゅうと締めつけられるようだった。

 匠海なら、美郷の不安な気持ちを軽くしてくれるだろう。

 婚約者に恋人らしい相手がいたかもしれないと話せば、何かしらの解決策を立ててくれそうだ。

 そして、そんな婚約者と違って、会いたいと言えば、今からでもすぐに飛んできてくれる。
< 91 / 241 >

この作品をシェア

pagetop