無題

「あたしが…良いって言ったんだよ」

ちゃんと陸に聞こえるように、チラリと見上げながら、よく通る声でハッキリ言った。
華を抱き締める腕に、いっそうの力が入る。

痛くはない。
ただ、心臓がバカみたいに高鳴って。
陸に聞かれてしまうのが、恥ずかしかった。

人肌が、こんなに心地良いなんて知らなかった。
華は、陸の胸に顔を埋めながらボンヤリとそんなことを思っていた。
陸は変わらず、華の髪を優しく撫でている。