届け、響け、繋がれ
真っ先に純粋に嬉しかった。夢を持つ憧れの人が一歩夢に近づいたのだ。叶えようとしているのだ。

でも、次の瞬間ブラックアウトしたみたいに頭が空っぽになった。

留学という言葉が、直接「さよなら」って言われているような気がした。

毎日のように顔を合わせて一年以上。

2人でじゃれて撮った映画も
カフェでいがみ合う時間も
一緒に勉強会する機会も

もう無くなっちゃうんだ。

喜んでいたことが嘘のように寂しくなってくる。

だって、気がつけば

憧れが憧れを超越しちゃって、知らないうちに心を埋めつくしてて、もう止められないぐらいに


好きになってたから。


でも、だからこそだよね。



「良かったです!何ヶ月ぐらいですか?英語、壊滅的だから心配です」



「余生なお世話、来年の6月までとりあえず。その後日本に戻ってくるかもわかんないんや」


先輩は珍しく弱気な発言。



「ビビってるんですか?」



「っ!んなわけ!俺は行く。映画もっと知りたいから」


本能からの言葉だ。ハッとした。ドキッとした。



「サークルは任せてください!」



「2年の分際で?」



「先輩の次に私が行ってるんですよ?年功序列なんて古いです!明日になれば、先輩にもタメ口ですよ?」



「言わせておけばー、お前なぁ」


先輩は、いつもみたいに爽やかな笑顔を見せた。
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