【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「関東医科大、今日行く日だよね? そこのね、脳外の先生に頼まれてて、資料持って行くって約束しててさ、これね、渡しとくから」
「あ、はい。脳外の、何先生ですか」
仕事の話になって、できる限りシャキッとしてペンとメモを取る。
「脳神経外科の、市來(いちき)先生」
多喜子先輩が私の用意したペンと紙に、「字はこうね」と書いてくれる。
「……わかりました」
「ちょっと大丈夫ー? 初日からそんなんじゃ怒られるよ?」
「えっ、そんな恐いドクターなんですか?」
思わず背筋が伸びる。
一刻も早く酔いを覚まそうと野菜ジュースのパックを手に取ると、多喜子先輩はニヤリと笑った。
「スタッフが口揃えて〝神の手〟なんて言うドクターだからね、私たちにも厳しいわよ、そりゃ」
出た。ベテランおじさん先生か、と一気に気が重くなる。
そういうドクターは決まって神経質で細かかったりする。
あなたじゃ使えないから前の子に戻して、とか言われて多喜子先輩に迷惑をかけないようにしなくては……。
「わかりました。心して行ってきます」
勢い良くストローを吸い上げると、残り少なかった野菜ジュースがズビビとおかしな音を立てた。