【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
多喜子先輩からの引き継ぎだから、担当が変わり私が訪れることはすでにどこの先方にも知らされている。
まずは多喜子先輩が約束を取り付けてきた日時に訪問し、新担当として顔と名前を覚えてもらうことが最初の仕事だ。
ここの脳神経外科の市來先生との約束は、朝の九時にと時間の指定をされている。
多喜子先輩の話によると、そのあとにオペが入っているらしい。
時間に遅れると会ってもらえないと聞いているから、相当忙しく、その上うるさいドクターなんだろう。
MRの仕事を始めてから常々思うことは、ドクターはちょっと変わり者が多いということ。
でも、どんな先生が相手でも、個人的感情は決して出してはいけない。
常に感じよく、気配り目配りを忘れないこと。
先生に嫌われてしまえば、私たちの仕事は成り立たないと言っても過言ではない。
多喜子先輩からの申し送り通り、広い病院内を案内に沿って脳神経外科の外来へと向かう。
第三診察室まである部屋の前に〝本日の担当医〟と名前のプレートが挿さっているから、時間になったらノックして入っていいと言われていた。
迷うことなく脳神経外科の外来にたどり着き、第二診察室に【市來壮介(そうすけ)】と名前を確認する。
腕時計を見るとちょうど八時五十九分で、「失礼します」と声をかけてドアを開いた。