【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「おはようございます! メディカ新薬工業の中条と申します。本日より佐伯に代わって私がお伺――」
部屋に入って頭を下げて挨拶をし、顔を上げて見えた姿に声が出せなくなった。
一瞬にして頭が真っ白になる。
「――失礼しました!」
入ったドアを慌てて開け、勢い良く外へ飛び出す。
廊下にいた患者さんたちの不審そうな視線を受け、何事もなかったように姿勢を正した。
……ちょっと待って。どういうこと?
必死に落ち着きを取り戻そうとしているのに、鼓動が痛いほど爆音を立てていく。
部屋を間違えた⁉︎と名前のプレートにバッと振り向いたけど、やっぱり間違いなく〝市來先生〟の診察室だ。
まさか、そんなわけ、そんな思いでおろおろしていると、中から「見えてるぞー、そこで何をしてる」と聞き覚えのある声がかけられる。
やっぱり何もかもが信じられない気持ちのまま、観念して再びドアを開いた。