【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
もし、営業先のドクターだということがわかっていたら、昨日みたいな間違いは絶対に起こさなかった。例え酔っていても、だ。
だから、市來先生にも昨日のことは……。
「と言いますか、できれば忘れてください!」
深く頭を下げてお願いする。
そう、忘れてもらうのが一番いい。
これから仕事で関わることになるなら、お互い昨日のことは記憶から抹消した方がいいに決まってる。
そう思って下げていた頭に、フッと鼻で笑うのが聞こえた。
「忘れろ……ねぇ」
続けてクスクスと笑われて、バッと顔を勢い良く上げた。
「あんなに盛り上がったのに?」
悪びれる様子もなくサラリと出てきた言葉に、ボンッと顔が熱くなる。
機関車のように耳から蒸気が噴き出たかと思った。
「だっ、だから、しぃーーーっ!」
特に部屋の中に看護師や誰か別の人間がいるわけではなかったけど、慌てて声を上げてしまう。
なんてことを言うの、この人は⁉︎
自分の口の前で立てた〝しぃー!〟の人差し指を、市來先生にいきなり正面から掴み取られた。
「俺にそんな態度取ってもいいわけ?」