【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「へっ……?」
「仮にも、俺はお客様なんだけど?」
ゔ……。
私の人差し指を握り締めたまま、綺麗な顔には不敵な笑みが浮かぶ。
ギョッとした矢先――握っている手と反対の先生の手が、下りている自由な私の手首を掴み取った。
驚く間もなく引き寄せられ、先生は身長差を詰める。
普通では有り得ない距離感に、咄嗟にぎゅっと目をつぶった。
「わかったら、これからよろしくな? 雪音」
よ、よ……呼び捨てー⁈
「は、はい……」
「目、開けていいぞ。何もしないから」
掴まれていた両手から先生の手が離れていく。
薄っすら目を開くと、市來先生は何事もなかったようにキャスター付きのチェアに腰を下ろしていた。
「期待させたか、悪いな」
「えっ、はい⁈」
意味深な言い方をされ、また心拍が上がる。
まるで私がキスでもされるのを待っていたみたいな言い方に、いい加減頭がカッとなった。
「では、また伺います! 失礼します!」
動揺しているのを気付かれないよう、足早に診察室をあとにした。