【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
しんとした中で突然声をかけられて、肩を震わせて背後を振り返った。
そこに立っていたのは、オペ着も白衣も脱いだ市來先生。
昨日とは違うネイビーの三つ揃いのスーツに、同色系のレジメンタルタイ。
仕上がりすぎている姿に息をのんでしまった。
「本当に来た」
が、やっとやって来た私に対してのその気の抜けた一言にムッとくる。
まるで〝冗談で言ったのに〟みたいな風味だ。
「なんですかそれ! 来ますよ、行くって言ったんですから!」
つい病院内だというのを忘れかけて声のボリュームが上がってしまう。
慌てて周囲をキョロっと見回した私を、市來先生はクッと笑った。
「行くぞ」
「え? 行くってどこにですか」
「ここは話す場所じゃない。ストレッチャーが走るぞ」
そう言いながら、私が歩いてきた廊下を歩いていってしまう。
再びキョロキョロと交差する廊下の先を見ていると、奥に救急搬送口と書いてある入り口が見えた。