【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「あの、どちらまで……?」
まだ建物の構造を覚えていないのもあり、先生がどこに向かって歩いているのかよくわからない。
やがて関係者の通用口から建物の外に出ると、迷うことなく裏にある四階建の立体駐車場へと入っていく。
斜め前を歩いていた足を止め、横に並んだ私の背に手を添えた。
「送ってく」
「えっ、いえ、大丈夫です」
「車じゃないんだろ? 飲んでるみたいだもんな」
なぜバレてるの⁈
確かにビールをジョッキ一杯いただいてきてしまった。
もしかしてお酒くさい?と急に不安になって、俯き加減になる。
昨日も浴びるほど飲んで、今日は不調のくせに付き合いでお酒の席にいた。
こいつ、どうしようもない酒乱女か?なんて、思われてるはずだ、間違いなく。
ロックを解除する電子音が鳴って、近づいた黒いボディーの車のドアが開けられる。
ん?こっち側は運転席……とやっとそこで顔を上げると、左ハンドル車だということに目を見開く。
恐れ多くて乗らずに立ち尽くした私を、市來先生は「ほら、乗れ」と押し込むようにして中に追いやった。