【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
初めて乗る高級外車に、緊張で身体が固くなる。
革張りのシート、洗練された内装は一流を物語っていて、庶民の私には恐れ多い助手席だ。
すぐに運転席側の扉が開いて市來先生が乗り込んでくる。
「あの、渡しそびれてしまってすみませんでした」
落ち着かない気持ちを鎮めようとしたら、本来の目的をハッと思い出した。
仕事モードに頭を切り替えて、資料を差し出す。
シートベルトをつけながら「どうも」と受け取った先生は、ぱらぱらと確かめるように中身を眺め、後部座席へとそれを置いた。
「そうだ……これ、返しておく」
「え……?」
どこからともなく出てきた一万円札を、市來先生は私に向かって差し出す。
「今朝、ベッドサイドに置いてあったやつ」
ドクンと、心臓がびっくりでもしたかの音を立てた。
そこから規則的にどくどくと鳴り始めてしまう。
思い出さなくてもいいのに、昨日のあの部屋での出来事が断片的に脳裏に映像で蘇ってきて、更に自分を追い詰める。
「ひゃっ!」
そんな中、膝の上でカバンを抱えていた手を突然掴まれ、変な声を上げてしまった。