【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「え、あの」
さっさと受け取らない私に痺れを切らしたらしく、強引にお札を手に握らされる。
「でも、私にも半分は出す義務が――」
「半分?」
私の発言を聞き返した市來先生は、クッと肩を揺らす。
「大丈夫、気持ちだけもらっとくから。これじゃ折半には全然足りない」
「へっ⁈」
「だから、お気遣いなく」なんて、余裕の笑みを浮かべて遠慮されてしまった。
話を理解した途端に、カッと顔面が熱くなる。
確かにその通りだろう。
あのラグジュアリーな一流ホテル。
福沢諭吉を一枚出して半分出した気になっていたら、笑われてしまうはず。
「飲み代のために大事にとっておけ」
とどめにそんなことまで言われて、羞恥心でいっぱいになってしまった。
お札を掴んだまま俯いた私の顎下に、不意に先生の指が触れる。
「なんだよ、その顔」なんて言葉と共に顔をクイっと上げさせられた。