【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
見られたくない顔を間近で見られて、一瞬合ってしまった視線を慌てて外す。
自分が今、絶対に微妙な顔をしているのは確認しなくてもわかる。
目の前でクスッと笑う気配を感じた。
「いじめたくなる顔、するな」
「えっ……」
思いもよらない言葉に、ドキンと鼓動が打ちつける。
咄嗟に身を引けるだけ引いて触れる手から離れると、市來先生はクスッと笑って何事もなかったようにハンドルを握った。
程なくしてエンジンがかかり、滑らかに車が発進する。
立体駐車場を出て病院の敷地内をあとにした車は、すぐに大通りへと出ていく。
家までの道を聞かれて説明をしてからは、特に会話もなく車内は無音に包まれた。
赤信号で前を走っている車がテールランプを点けて停車していく。
そのいくつもの赤い光を目にしながら、となりで運転する市來先生の存在に、高鳴ってしまった鼓動はなかなか音を静めてはくれなかった。