【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「お気遣いなく。お忙しいでしょうし。ご迷惑をかけた上に、送っていただきありがとうございました」
車内を蹴飛ばさないようにそろりと足を路上に下ろし、立ち上がろうとすると、市來先生の手が私の二の腕を掴む。
引き上げるようにして私を立たせ、その手がナチュラルに背中へと回った。
予告なく腕の中に捕まるような形になって、驚いて顔を上げる。
私を見下ろす極上の微笑に、心拍が大きく跳ね上がった。
「可愛くないな、もっと残念がらないわけ?」
「えっ、なっ!」
意地悪く吊り上げた口角に慄く。
反射的に先生の胸元を押して逃げようとすると、意外にもすんなり腕を解いて解放してくれた。
「おかしいな、普通はここで残念がる女が大半なんだけど」
「はっ、はぁ?」
ギョッとする私を物ともせず、市來先生は私を下ろした助手席のドアを閉める。
道路上で突っ立つ私の背をさっと攫い、歩道まで連れて行った。
「じゃ、気を付けて帰れよ」
ひらっと手を振り、颯爽と運転席へと消えていく。
呆然としているうち、車はあっという間に先の交差点を曲がって消えていった。