【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「ありがとう。ほんと美味かった」
真っ直ぐに私を見て、先生はにこりと微笑む。
その顔に心臓がドキンと大きく跳ね上がって、カッと顔面が熱を持った。
「人の手作りとか久々だった。このお返しは――」
「いいんです! お気になさらずに!」
頭を下げてお辞儀をしながら、頭上に載った手からもついでに逃れる。
ささっと立ち上がり「では、失礼します!」ともう一礼してその場を大股で歩きはじめた。
募った緊張を振り払うように歩みを進めても、さっき目に映った市來先生の顔が焼き付いて離れない。
人の好意を受けることや、他人に何かしてもらうことは、市來先生にとって日常的で、きっと当たり前のことなんだと思う。
そう思っているから、あんな風に〝ありがとう〟を素直に言える人だと思ってなかった。
でも、手料理が久しぶりだなんて言ってた。
そういうことやってくれる人なんて、たくさんいそうだけど……。
兎にも角にも、さっきのは不意打ちだし反則だ!
高鳴ってしまった鼓動はなかなか暴走をやめず、いつまでもぐるぐる市來先生のことが頭から離れなかった。