サッカーの王子様

じっと彼の手を見つめたまま動かない私に
不思議そうに首を傾げる

「もしかして…」

小さくそう呟いた彼は握手の手を引っ込め
自分の手のひらをまじまじと見つめ
安心したかのようにホッと息を吐き

「握手だよ!握手!大丈夫!
泥なんかついてないしどこも汚れてないからさ」

眩しい笑顔でそう言って
なかなか手を伸ばせないでいる私の手を
優しく導くように引いて
大きな手で私の手を握った…。

ドキドキする…。
そしてこの感覚もまたなつかしく感じた…。

でも違うよ?
握手の手なかなか出せなかったのは
彼の手が汚れてるか心配だったからじゃない
ただどうすればいいのかわかんなかった
初めて聞くはずの彼の名前にも反応して
言葉を発する余裕も差し出された手に答える
そんな余裕もなかった…。

この気持ちは誤解されたくない。
初対面の人に対して失礼だし
その人の手が綺麗かどうか確認して
握手するなんて思われたくない



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