キミがくれた世界
「パパ!あっちいこ!観覧車!」
「そうだね。今度はあっちの観覧車に乗ろうか!」

わずか数分でケンタはパパとしての役割がわかったようで、ママ…いや、ケイコのことを自らの娘のように扱っている。

ケイコもとても楽しそうにしている。

言っていなかったが、俺は年齢を変えることだけができるわけではない。
お互いの立ち位置を入れ換えたり、いる場所を変換させたり。

俺はこの世界を試しているのだ。

そして、15分もすればケンタは俺を忘れるだろう。

ケンタのようにすぐに状況を把握して、そこでの自分のあるべき姿を見つける子もいれば、状況把握ができずそのまま元の状況に戻されることもある。

この15分の間に順応できた人間には、そのまま新しい人生を手に入させられる。

でも、そう簡単にはいかない。

俺の父親もそうだった。

父親の会社が倒産した時、俺にこの能力があると母親から聞いたらしく、数年後、俺にこう頼んできたんだ。


「もう一度同じ会社で働きたい」


俺はそんな父を尊敬してた。

ずっと同じところに監禁されて、やることはいつも同じ。
そんな生活なんか耐えられない。

ずっとそう思っていたから。

だから俺はその時父親に俺の世界を見せた。


でも、それは失敗してしまった。


俺の記憶からは消えることはないからいまでも鮮明に覚えてるけど。その時父親は俺に最後の言葉なんかくれなかった。きっと記憶が消えることは聞いてなかったんだろう。

それから俺はずっと一人で生きてきた。

俺を知ってる人など誰もいない。

そんな世界に…
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