剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?

「俺こそごめん。

 俺、星宮にずっと嘘吐いてた」

「嘘?」

「……」


 香取くんはまた小さく溜め息を吐いて、眼を伏せる。


「なぁ星宮」

「ん?」

「星宮は…今もソイツのこと、好きなのか?」

「ソイツ?」


…って誰?


「前に言ってたろ、『好きな人がいる』って」


 あ…あの時の…


「何とか星宮に近付きたくて、でもなかなか出来なくて、そんな時にその話聞いて余計に焦って…

 思わずハッタリ言った、『恋の仕方教えてやろうか?』って」


 え…それってつまり…?


 そわそわし出す私に香取くんはちょっと自嘲気味に笑って言う。


「気付けよ。なんでお前が好きなヤツと上手くいくためにわざわざ恋の仕方稽古してやるなんてバカいると思ってんだよ」


「香取くん…?」



「好きだよ、星宮」



(香取くんっ…!!)



「嘘吐いてごめん。

 でも俺は…星宮が良い。星宮じゃなきゃ嫌なんだ」



 あぁ私たちは…
 なんて遠回りしていたんだろう…


 私も香取くんが良かったの。
 だから香取くんが私のこと好きじゃなくても、ただのお稽古だったとしても、香取くんと一緒にいたかった。

 香取くんのその嘘を利用したのは、私も同じ。

 香取くんが良いのは、香取くんじゃなきゃ嫌なのは、私も同じ─


 涙に視界がぼやけて廊下の天井に並ぶ蛍光灯がきらきら歪んで、堪らなくなって私は香取くんの胸に飛び込んだ。


「え!あ、ちょっ、ま…」

 珍しくおろおろして香取くんが避けようとする。

「俺今多分すっげー汗臭い…」


 でも私は気にせず彼の胸にぎゅうとしがみつく。


「……

あぁ!もう!」

 香取くんは大きく溜め息を吐くと、両腕で包み込むように私をぎゅっと抱き締めた。



「だから言ってんじゃん。
 我慢利かないからさ、あんまり煽らないで…」



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