剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
奴らが帰ってしまうと辺りは一気に静かになった。
星宮と俺、ふたりきりの教室─
普通こんな時、何て話し掛けるのが正解?
俺はただノートを書き写す。
かつかつとペンが走る音、グラウンドの運動部の声、それに、高鳴る鼓動だけが聞こえる。
(別にノートなんか取らなくてもいいんどけどな)
星宮の視線を感じる。
ノートを人質に拘束して、何やってんだろう、俺。
普通こんな時、告白のチャンスなんだろう。
『星宮が好きなんだ』
言ってしまえたらどんなにいいか─
でも、知ってる。
「星宮、好きな奴いるの?」
「えっ…!?」
星宮の頬が一気に紅潮する。
可愛いな、なんて思うと同時に、これを染めてる奴に嫉妬する。
「あのっ…それはっ!た、多分そんなんじゃなくて!えーと…」
「ぷっ!」
何そのしどろもどろ。可愛過ぎる。
「なぁ、そういうのってさ、恋愛し慣れてない感バレバレ」
「う…」
無垢で清らかで。
その瞳に映るのが俺だったら良かったのに…
「どうせお前、恋もしたことないんだろ?」
俺だってそうだけど。
でも女子たちが、俺がクラス1の美女だの年上の女だのと付き合って手馴れてる、なんてどこかで捻曲がった噂してるのも俺は知ってる。
「教えてやろうか?恋の仕方」
成り行きだった。
「…え」
「好きな奴と上手くいきたいんだろ?」
賭けだった。
「……」
「稽古、つけてやるよ」
俺は机に手を突いてぐいと身を乗り出し、星宮の顔を覗き込む。
「どうする?」
頼むから「はい」って言って…
「…よろしくお願いします」
おずおずとそう答える星宮。
(マジかよ…)
顔では平静を装うけど、正直俺が一番驚いてる…
そんな風にして俺と星宮の『疑似交際』が始まった。
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