剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?

 暮れなずむ空に星がひとつ。

 屋台の並ぶ遊歩道はいつにも増して狭く、人でごった返す。
 見回せば周りは言葉を交わし合い、笑い合い、そして手を繋ぎ合う幸せそうな人ばかり。

 俺たちと正反対な…?


「きゃ…」

 不意に星宮の声がした。
 慌てて傍らを振り返ると、流れに逆らう人にぶつかって転びかけた星宮が俺に手を伸ばし、Tシャツの裾を掴んだ。


(あ…)


 星宮の手がTシャツ越しに俺の脇腹に触れ、一気に熱を持つ。


「ごめん!」

「いや…」


 こんなことでドキドキするとか、変態かよ、俺!

 星宮がTシャツを離した後も触れたところに神経が集中するみたいで、胸の高鳴りが収まらない。


 本当はもっと、触れていたい…


 左後ろを申し訳なさそうに歩く星宮にちらっと眼を遣る。


「……

 なぁ、お前さ危なっかしいから、なんなら掴まっといていいけど」

 そう言って肘を突き出す。

 今の俺の精一杯…


 なのに星宮は


「だっ、大丈夫だから!」


と、背中の後ろに手を隠す。


 分かってる。
 星宮が好きなのは『ソイツ』で、俺に気がないってことは。

 でも真っ向拒否られると傷付くんだよ…


「…ふーん」

 やり場のなくなった肘を引っ込める。


『ソイツ』の腕なら取るの?

 桜色の小指の爪がちらりと覗く。

 思わず震える左手を伸ばしかけて、そのまま拳を握った。


 触れそうで触れられない距離にいるから余計切なくて苦しいんだ─

        *
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