剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
 香取くんは立ったまま日誌の残り数行を書いてしまうとノートを取り上げる。


「あ、私持ってくよ!」

「いいよ別に」


 教室から出ていこうとする彼を追い掛ける。


「あの…ありがとう」

「別にいいよ」

 長い脚でどんどん進む香取くんを小走りになって追い掛ける。

 追い掛けながらちらっと顔を見上げる。
 長い睫毛、通った鼻筋、形のよい唇。非の打ち所のない端整な横顔。


(ホント綺麗だなぁ)


 その綺麗な横顔が言う。


「あのさ、今度から高いとこ上る時はジャージ穿いた方がいいよ」

「えっ!?」


 私は立ち止まってあわててお尻を押さえた。


(みっ!見られちゃった??)


 教卓の上でバランス崩した時だ…私のバカ…


「別に見たくて見たわけじゃない」

 香取くんは私を置いてどんどん先に進みながら興味なさげに言う。


(そっ!そりゃそうなんですけどっ!)


 …あ、でも待って?


(そっか。私の方を見ないで話してたのは見えないように顔を上げないでいてくれたからなんだね)


 ただの無愛想と思ってたけど、実は紳士なんだ。
 なんかもしかしたらちょっと良い人かも─


 香取くんが廊下の角を曲がる。


「ちょっと待ってー!私も行くーッ!」


 職員室に向かう渡り廊下は初夏の風。
 私は香取くんを追って夕映えの中に飛び込んだ。


    *   *   *
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