剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
 香取くんの後ろでまた一人が金属棒を振るう。

「危ない!」

 私は自転車から飛び降りた。
 同時にガツンと鈍い音がして香取くんの左肩に金属棒が当たる。

 私は倒れた自転車がガシャーンと派手な音を立てるのを背中に聞きながら、香取くんたちの方へと走った。
 そして私は目一杯の声で叫ぶ。


「お巡りさーんっ!こっち!こっちです!!早く早くッ!!」


「やっべ!」
「ワンチャンあったな!感謝しろよ!」
「早くいこーぜ」

 蜘蛛の子を散らすように男たちが走り去っていく。


「香取くん!」

 肩を押さえてふらりと立ち上がる香取くんの元へ駆け寄る。


「香取くん!大丈夫!?」

「…あぁ、大したことない」

「何!?どういうこと!?あぁ、早く警察に連絡しなくちゃ…」

「そういうの要らないから」

「なんで!?だってこんなのッ…」

「だからいいっつってんの」


 取り乱す私に対して香取くんはあくまで落ち着いた様子で言った。

「余計なことしなくていい」


「……

なんで…?なんでやっつけちゃわないの…?」

「え?」

「香取くんならあんな奴ら、やっつけれちゃうでしょう!」


 私はなにか口惜しくて唇を噛んだ。
 そんな私に香取くんは溜め息をひとつ吐き、言った。


「剣道ってのはそういうことに使うもんじゃない」


 香取くんはまだ手にしていた長い枝を丁寧な所作で地面に置く。
 それから少し離れたところに落ちていたリュックを拾い上げた。


「…痛っ」

 顔をしかめて左肩を庇う。
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