剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
「ねぇ香取くん。黙っておく代わりに条件があるの。」
「何?俺を強請ろうっての?」
「そんなんじゃないよっ!
ね、香取くん。友達になろ!」
「…は?」
「だって香取くん、見るからに友達少ないもん」
「そんなもん少なくても困んねーし」
「じゃ交渉決裂。警察に連絡する」
「おい、待て!」
「じゃ、今日から友達」
「…分かった」
やがて香取くんの家の前に着いた。
間口の広い門扉の向こうには広い庭と新しく大きな家。思ったよりはるかに立派なおうちで、お邪魔するわけでもないのに緊張する。
香取くんは傘を畳んで、自分のリュックと入れ替わりにそれを自転車のかごに入れた。
「じゃあ」
「あ、うん!肩、お大事にね!」
門のハンドルに手を掛けたところで香取くんが今一度振り返る。
「ありがとうな、星宮」
「!!
あっ!ううん!」
「行けよ、濡れるから」
「うん、また明日ね!」
私はハンカチでさっとサドルを拭うと、自転車に飛び乗って走り出す。
途端に雨が正面から吹き付ける。
(香取くん、私の名前知ってた…
初めて名前呼んでくれた…)
そんな小さなことが私はなんだかとても嬉しくて、大切なことのように思えた。
ぐんぐんとペダルを踏み込む足が軽やかに感じる。
冷たい雨さえも今はまるで空から降り注ぐシャワーのように思えるほどに。
* * *