剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
「…何?」
用なんてなかったんだけど…
帰っちゃうの寂しいな、なんて思ったら条件反射的に呼び止めてしまった。
「あ、あの…送ってくれてありがとう。
あっ!また一緒に帰ろうね!」
視線がきょろきょろしてしまって今の私ものすごく不審な感じだ…
せめて最後は精一杯の笑顔で見送りたい。
一生懸命顔を上げてした作り笑顔は、鏡を見なくても分かるほどぎこちない。
不意に香取くんはこちらへ手を伸ばし、ハンドルを握る私の手に触れた。
(え…?)
手の甲に感じる温もり。
大きな掌の力強さ、安堵感、それに私の胸を揺さぶるときめき。改めて(男の子なんだな)なんて感じさせる、そういうもの、全部。
ほんの一瞬でその手を離すと、香取くんは黙って地面を蹴った。
軽やかに走り出す自転車。弧を描いて元来た方へターンするとどんどんスピードを上げて、やがて角を曲がり見えなくなる。ただ私の手の甲に僅かな触感を残して。
小さな空虚感。
そして、香取くんのいなくなった道を見送りながら私は気付いてしまうんだ。
(あぁ私…
香取くんのこと
好きなんだ…)
と。
* * *